獣医師奥田先生が解説、子犬が咬むって悪いコト?

2021/11/04 00:00

 「子犬に咬まれて困っています。何しても咬むんです。どうしたらいいですか?」パピークラス(子犬教室)では、毎日そんな相談をお受けしています。

 ケージから出すと大興奮で咬む、ロープ遊びをしている時に手を咬む、家族がテレビを見ているとスリッパを咬む、触ろうとすると咬む…色々な状況で子犬は咬みついてきます。

 「咬まなくなってほしい」というのは、飼い主さんの共通の願いかもしれません。でも、「咬まない」ことは動物として正常な事なのでしょうか?

 子犬は本来、兄弟犬と一緒に成長します。生後2~4カ月のころは特に兄弟犬とよく遊びます。その過程で、将来必要になる、犬同士の関わり合いや、狩りのための体の動かし方を学んでいきます。

 子犬同士は取っ組み合いをして遊びます。その際には口を使って相手を抑え込むこともあります。犬同士、咬み合うことは普通のことです。咬み合うことで成長していくんですね。

 しかし、現在の犬たちは、生後2カ月ごろに飼い主さんの家に来たら、犬は自分だけ、人に囲まれて過ごすことになります。兄弟犬と咬み合って遊びたいのに、その相手がいない。当然、咬みたい、遊びたい欲求は、飼い主さんに向くことになりますね。その結果、飼い主さんが咬まれるわけです。

 咬まれれば手は痛いですし、血も出ることがあります。でも、子犬は咬むことで正常な発達をしていきます。「咬まなくなってほしい」という願いは不適切です。

 子犬の咬みつきへの対応で大切なことは「咬ませない」ことではなく、「適切なものを咬ませる」ことです。

 例えば、フードを中に詰められるゴム製の噛むおもちゃを与えることは、噛む欲求を満たす基本です。歯の生え変わりでムズかゆい歯茎への刺激にもなります。

 手を咬むことが多い子は、手にパペット人形をつけて、むしろ咬ませてあげるというのも良い方法です。興奮しすぎて収拾がつかなくなる前に適度に休憩を入れるようにするとなおよいです。

 ロープ遊びも、ロープの動かし方次第で夢中になります。逆に、ロープを咬んでいる時には単調な動かし方、手を咬んだら「痛い、痛い!」と大きなリアクションをしていては、手を咬む行動を教えているようなもの。ロープを生きた動物のように動かすことが大切です。

 子犬が咬むことは、飼い主にとっては困った行動ですが、子犬にとっては一生の基盤を作る発達のための行動。「咬む」=「悪いコト」と捉えるのではなく、「咬む」=「必要なコト」と捉えて、欲求を満たしてあげましょうね!

文=奥田順之/獣医師

(プロフィール)

ぎふ動物行動クリニック院長。獣医行動診療科認定医・日本獣医行動研究会広報委員会委員長・鹿児島大学講師(動物行動学)。2012年NPO法人「人と動物の共生センター」設立し、犬のしつけ教室ONELife/ぎふ動物行動クリニックを開設。しつけ教室では、犬と人が共に育み合う=“共育”をモットーに、レッスンを実施している。

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