獣医師奥田先生が解説、甘噛みと本気咬みの違いとは?

2021/11/20 00:00

(画像=gettyimagesより)

 深刻な犬の攻撃行動では、犬歯が刺さって流血する、いわゆる「本気咬み」もしばしば。本気咬みまでの経緯を伺うと、「子犬の頃から咬む行動があったものの『歯が当たる程度の“甘噛み”だから大丈夫』だと思っていたら、だんだんと強く咬むようになってしまった」と言うものが多いです。

 飼い主さんは、咬みつきの強さをみて、「“甘噛み”だから大丈夫」と思ったのかもしれません。しかし、重要なのは、咬む強さではなく、咬む”動機付け”です。

 動機付けとは、犬が咬もうとする動機のことです。子犬の場合、飼い主と遊びたくて飼い主の手を咬むことや、飼い主の関心を引こうとしてスリッパや靴下を咬むことが多いでしょう。「遊びたい」「関心を引きたい」という動機付けによって咬む行動が発生しています。

 「十分に遊ぶ」「散歩にたくさん行く」「噛むおもちゃを与える」といった犬のニーズを満たす対応によって、咬む行動は発生しにくくなります。こうした動機付けの場合、攻撃しようとしているわけではなく、犬歯が刺さるほど強く咬むことはほとんどありません。

 一方で、抱っこされるのが嫌で咬む、触られるのが嫌で咬むといった行動では、「抱っこが嫌・苦手」「触られるのが嫌・苦手」という動機付けからの攻撃です。嫌な事から自分を守るという動機付けであり、身を守るための行動です。

 犬は、必ずしも触られることが得意ではなく、苦手な子も多くいます。そういう犬たちは、咬むという行動を通じて、飼い主に「それは嫌だよ」「苦手だよ」というメッセージを伝えているのです。

 はじめは歯を当てる程度で「嫌」を伝えます。しかし、飼い主がそのメッセージを受け取らず、「うちの子、触ろうとすると甘噛みしてくるけど、甘噛みだから大丈夫~」と思っていると、犬は「軽く咬んでも分かってもらえない。強く咬まないと伝わらない」と考え、分からずやの飼い主を強く咬むようになっていきます。

 大切なことは、メッセージを理解すること。嫌であることを分かってあげることです。そのうえで、「触られることは嫌なことじゃなくて、リラックスできる心地よいことだよ」ということを、トレーニングを通じてゆっくり教えてあげることです。

 子犬の咬みつき=甘噛みではありません。そして、軽く咬んでいる=甘噛みではありません。子犬が自分の身を守る・資源や空間を守るために咬む時、それは「本気咬み」です。子犬がなぜ咬むのか、その動機付けを考え、メッセージに気付いてあげることが、咬みつきを解決するための第一歩です。

文=奥田順之/獣医師

(プロフィール)

ぎふ動物行動クリニック院長。獣医行動診療科認定医・日本獣医行動研究会広報委員会委員長・鹿児島大学講師(動物行動学)。2012年NPO法人「人と動物の共生センター」設立し、犬のしつけ教室ONELife/ぎふ動物行動クリニックを開設。しつけ教室では、犬と人が共に育み合う=“共育”をモットーに、レッスンを実施している。

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