獣医師長谷川先生に聞く、老化と間違いやすい高齢猫の病気

2021/12/16 12:00

(画像はイメージ/pixabayより)

 「元気があって食欲もすごくあるんだけど最近痩せてきた気がする、これって病気なんでしょうか?」高齢猫の飼い主さんからこういった質問をよくいただきます。結論からお話しすると老化現象の可能性もあれば、甲状腺の病気(甲状腺機能亢進症)や糖尿病などあまりはっきりと体調が悪いと分からない病気が原因で痩せていることもあります。今回は高齢期に多い、老化現象と間違いやすい病気についてお話ししたいと思います。

 甲状腺機能亢進症や糖尿病の病気は高齢猫での代表的な内分泌疾患で毛並みが悪くなったり、元気に見えてご飯も食べているのに痩せていってしまうというなんとも“老化現象”と間違いやすい症状を示します。日頃から体重に注意していないと痩せてきたことに気付くことは難しく、明らかに痩せたと気付く頃には病気が進行してしまっていることもしばしばです。ではそんな老化現象と間違いやすい病気についてそれぞれ見ていきましょう。

甲状腺機能亢進症

 体内で甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることにより起こる病気で、発症年齢はそのほとんどが8歳以上といわゆるシニア期に集中しています。甲状腺ホルモンはもともと、身体の代謝を活性化する働きがあるので過剰に分泌されると代謝が進みすぎて身体が消耗し、みるみる痩せてしまいます。その一方で交感神経が刺激されることにより異常に活動的に動き回ったり、ものすごい食欲でご飯を食べたりするので一見、とても元気な状態に見られます。病気のことを知らないままこの症状だけ見ていると元気なので老化現象で痩せてきたと思っても無理はないですね。

糖尿病

 ヒトの病気としてよく耳にする糖尿病、意外と猫にもあることを知らない飼い主さんも多いのではないでしょうか?糖尿病は体内のインスリンが不足することにより“糖”をエネルギーに変えることができないので高血糖の状態が続き、その代わりに筋肉や脂肪を分解することでエネルギーを作り出すのでみるみる痩せてしまいます。一方で身体はその状態を危険と感じ、より食べることで補おうとするので多食傾向になります。糖尿病の怖いところは初期では元気でよく食べているのであまり病気には見えないですが、進行するに伴って急激に痩せていきます。実際の診療でも、かなり痩せた状態になって初めて病院にくる子たちも少なくありません。特に糖尿病では初期の段階から水を飲む量が明らかに増えるといった症状が見られることも多いのでその様子があれば要注意ですね。

 高齢期になると老化現象として年齢とともに筋肉量も落ち、体重も少しずつ落ちてきますが短期間で急激に減る場合は何か病気が隠れているかもしれません。いわゆる“病気”の状態では体重が減少することも多いですが、特に今回お話しした病気では元気に見えるので老化現象と間違いやすいです。日々の様子をしっかり観察し元気そうに見えても体重が減少してきているようであれば一度、動物病院の受診を考えてあげましょう。

文=長谷川諒

 

(プロフィール)獣医師・潜水士
Ani-vet代表・ヤマザキ動物専門学校講師・北里大学獣医学科生化学研究室研究生
保護施設専門往診病院「レイクタウンねこ診療所」院長。首都圏(東京都・埼玉県)を中心に動物病院での診察も行う。保護猫活動を支援する傍ら、現役獣医師によるメディアでの知識の啓蒙にも取り組んでいる。

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