獣医師長谷川先生に聞く、高齢猫は特に注意したい肥満と病気の関係

2022/01/27 19:00

(画像:GettyImagesより)

 肥満は体脂肪が過剰に蓄積した状態のことであり、ヒトと同様に病気を引き起こす原因になりかねません。肥満は万病のもととも言われ、全ての年齢で改善した方がいい状態ですが今回は“高齢期の肥満”について詳しくお話しします。

糖尿病

 糖尿病はブドウ糖をエネルギーに変えることができなくなる病気で、肥満が深く関わっています。肥満状態では体内でインスリンに対する抵抗性が高まり、効きが悪くなるので発症しやすくなると言われています。高齢期では体も衰え、様々な病気を引き起こしやすくなりますが、肥満状態であればさらに糖尿病を発症するリスクが増えてしまいます。高齢期に入り、太り気味の猫ちゃんは気をつけましょう。

循環器疾患

 体内に脂肪が過剰に蓄積している状態は血圧が高くなりがち、その分心臓の負担が増えると言われています。高齢猫では目に見える症状があまりない心臓病を隠し持っていることも多く、知らず知らずのうちに肥えた体にさらに負担をかけることになってしまいます。

関節疾患

 猫ちゃんの体重を支えているのは言わずもがなですが4本の足です。その体重が肥満のためにオーバーしてしまうとそれだけ関節にかかる負担も増えてしまいます。10歳以上の猫の90%以上が何らかの骨関節炎を抱えているとの報告があるほどに高齢期では関節が弱くなっているので、肥満による体重オーバーが炎症を悪化させてしまうこともあります。また同様に腰にも負担をかけてしまい、椎間板ヘルニアなどのリスクも増えてしまいます。どこか足を庇うように歩くなどの症状があれば減量を考えましょう。

 肥満傾向にあるだけでこんなにも様々なところに負担をかけてしまいます。これ以外にも脂肪に気管が圧迫されて咳が出やすくなったり、便秘になりやすくなったりといった症状が出ることもあるのでやはり太りすぎにいいことはありません。見た目にはポッチャリしている方が愛らしいですが、体にかかる負担を考えると体重を減らす努力をしてあげましょう。

無理なダイエットはNG

 肥満解消のためにはダイエットですが、やはり高齢期では無理なダイエットは避けましょう。体脂肪を減らすためには摂取エネルギーを減らすことと消費エネルギーを増やすことが中心になりますが、高齢猫に運動をさせてエネルギーを消費させるのは少しハードルが高いです。歳を重ねるにつれて筋肉量が落ち、関節の痛みから運動を積極的にさせることが難しくなるので減量の中心は摂取エネルギーを減らす、つまり食事の方で調整をしてあげましょう。

 ただ食事も無理なダイエットは禁物で、極端に食べる量を減らしてしまうと肝臓に負担がかかり肝不全を起こしてしまうこともあります。まずはおやつやフードを食べ過ぎているのであれば適正な量まで減らすことからチャレンジし、それでもなかなかうまく減量できないようであればかかりつけの動物病院に相談して減量用の療法食を処方してもらいましょう。結果を急ぎ過ぎず長期目線でゆっくりと目標体重まで減らし健康的なダイエットを目指しましょう。

文=長谷川諒

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