多田あさみの「にゃんことの暮らしQ&A」第2回 保護猫ボランティアとは? 種類と心構え

2022/02/13 12:00

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GettyImagesより

 タレントで「猫カフェ mfmf(モフモフ)」の動物取扱責任者である多田あさみさん。そんな多田さんが読者からの猫ちゃんに関する質問にお答えする連載「にゃんことの暮らしQ&A」。第2回目のご相談は「保護猫ちゃんのために何かしたいと思っています。猫ちゃんを迎え入れる以外で私にもできることはありますか?」というもの。保護猫ボランティアの種類や参加する際の注意点などについてお話いただきました。

第1回はコチラから

保護猫ボランティアは難易度で分けられる

 まず、保護猫ちゃんに関するボランティア活動にはどういった種類があるのでしょうか。

「基本的に現状、保護猫活動をしている団体や個人のほとんどがボランティアというかたちです。貢献度ではなく難易度で大きく最上級、上級、中級、初級に分けることができ、難易度が高くなるほどボランティアさんの判断や行動で猫ちゃんの生命を左右したり、その後の譲渡先の選択肢が変わったり、その子の一生にかかわることになります。

最上級は、猫ちゃんを自身で捕獲し保護し、譲渡まで行うボランティアさんです。地域での保護活動グループをつくったり、地域猫活動の啓蒙や他地域からの猫の流入を管理したり、里親探しも譲渡会への参加から、面接、審査に至るまですべてご自身でされていたり、保護猫活動に本腰を入れて活動されている方が多いです。

次に上級は、自宅で猫ちゃんを預かる「預かりボランティア」、乳離れしていない幼猫に数時間おきにミルクを与える「ミルクボランティア」、ボランティアというとこの辺りをイメージする方も多いのではないでしょうか。

中級となると、シェルターのお掃除や譲渡会の運営のお手伝い、そして「バケットボランティア」などがあります。

バケットボランティアとは、飛行や新幹線に乗る際、わんちゃんや猫ちゃんを手荷物として一緒に運んでもらい、目的地のボランティアさんに引き渡すことです。

たとえば、東京の保護団体から北海道に暮らすご家族に猫ちゃんを譲渡することが決まったとします。猫ちゃんだけで飛行機に乗る場合、貨物として猫ちゃんを飛行機に乗せて運ぶため、お客さんの手荷物より先に猫ちゃんは飛行機に積み込まれるので、長時間飛行機の中に拘束されることになります。

そうした時、旅行や出張などで東京から北海道まで飛行機で行くという方がバケットボランティアになり猫ちゃんを手荷物として飛行機に乗ってくれることで、猫ちゃんが飛行機に乗る時間が短くなるうえ、降りるときも手荷物と一緒に渡されるので、貨物より早く降りられます。そのうえ、値段も安く抑えられるのです。

初級、ボランティア活動の第一歩としては寄付があります。各シェルターさんたちが公開しているAmazonの欲しいものリストにあるものを寄付したり(猫カフェmfmfの欲しいものリストはコチラ)、猫カフェmfmfでは古くなったタオルを寄付してもらったりしています。また、うちのカフェに来てもらうことも収益の一部は保護猫ちゃんの生活費になりますし、遊んでもらうことで猫たちは人馴れしていくので、これからお家を探す猫たちにとっては有益なことのひとつです」

 前述のように上級のボランティアは、ボランティアさんの対応で猫ちゃんの今後や生命までもが左右されます。そのため、ミルクボランティアや預かりボランティアは猫ちゃんを看取るという可能性もあります。

「ミルクボランティアは知識と経験がないと参加すること自体が難しいです。地域の保健所や動物愛護センターで開催されているミルクボランティア養成講座に参加して講習を受けないと、ボランティアとして子猫を託してもらえないケースもあります。

ミルクボランティアが必要な月齢の猫ちゃんは体調が急変しやすく、原因不明のまま亡くなってしまうことも多いです。預かりボランティアで預けられる猫ちゃんも元気な子ばかりとは限りません。ボランティアというとどうしても日の当たる活動が目立ち「猫ちゃんにお母さんのように懐かれて楽しそうでいいわね」と言われることもありますが、寝る間も惜しんで一生懸命お世話した子の死に直面する辛い体験をするかもしれないということは、理解と覚悟をしておく必要があると思います。

また預かりボランティアの場合、猫ちゃんにトラウマを植え付けてしまうケースも……。たとえば、人間にあまり馴れていない猫ちゃんが小さなお子さんのいるお家に預かられたとします。子どもが「猫ちゃんだ~」と言ってその子を追いかけまわしてしまうと、子どもが苦手になり、いざ譲渡会に出た時に小さい子どものいるご家庭はNGにせざる終えなくなってしまうこともあります。

ミルクボランティアや預かりボランティアは大変やりがいのある活動ですが、その分、猫ちゃんの一生にかかわる責任も伴うということです」

先住猫と預かった猫は接触NG

 預かりボランティアへの参加を希望する人の中には、先住猫がいるご家庭も少なくないと思います。そうした場合、何に注意すればよいのでしょうか。

「基本的に先住の猫ちゃんと預かった猫ちゃんは、接触させないことが大前提です。なぜかと言うと、預かる猫ちゃんに対して、虫下しやノミ・ダニの退治、血液検査といった医療処置をどのくらいしているのかはシェルターやボランティアさんによって千差万別だから。

もしそういった処置がされておらず先住猫に病気が感染してしまったとしても、双方がボランティアなので誰も責任がとれません。基本的に預かった猫ちゃんの病気や寄生虫がすべてクリアにならない限り、先住猫と合わせることはしない方がよいでしょう。

また、多頭崩壊の家から保護した猫ちゃんの場合は妊娠・出産していることも多々あります。シェルターは猫が過密状態のため繊細な母猫には不向き。そのため、奪胎の処置を取れず、もう産まれてしまうという状態の母猫は預かりボランティアさんにお願いするということがあるのですが……。

先住猫が妊娠・出産した猫ちゃんのことが気になって仕方がなく、ケージの周りでずらりとその猫ちゃんを監視するような状態になっている例を見たことがあり、そうした場合、母猫が産んだ猫を食べてしまったり、ストレスにより死産や早産、育児放棄など、子猫を亡くしてしますリスクも大いにあります。

先住猫がいるご家庭は、預かる猫ちゃんにワンスペースあげられるという状態じゃないと預かりボランティアは難しいかもしれません。

また、預かった子のお世話がまったく出来ないという可能性もあるので、自分がまったく人馴れしていない猫ちゃんに投薬や爪切りなどのお世話ができるかどうかも考えて、猫ちゃんを保護している方や団体さんにあらかじめ自身の生活環境やお世話のスキル、家族構成を伝えて、適している子をお願いするのがいいと思います。

お金の寄付先はしっかり調べる

 寄付といった初級のボランティア活動を際の注意点も教えてもらいました。

「まれに、猫ちゃんが十何年と使った愛用品を、その子が亡くなった後に寄付しようとして下さる方がいます。保護猫ちゃんに役立てて欲しいというお気持ちは有り難いのですが、私達がその猫ちゃんが亡くなった理由、感染症だったり予防はしっかりとしていたのかといったことを、亡くした飼い主さんが辛い中詳しく伺うことはできません。

それが分からない限り、保護猫ちゃんたちに感染症などの病気がうつるリスクがあるので、猫ちゃんの愛用品をいただいても使うことはできないんです。療法食も同じ病気の猫ちゃんがいればいいのですが、基本的に獣医師の指示によって与えるご飯なので、あまり寄付には向きません。同じ病気の猫ちゃんがいる場合、そのフードの寄付を受け付けている団体さんもありますので、そちらに関しては寄付の前に確認してくださると助かります。

また、お金を寄付する場合は、寄付する先についてしっかりと調べた方がいいと思います。最近はクラウドファンディングなどで資金を募っている団体や個人の方もいますが、必ずしも集まったお金が保護猫ちゃんのためだけに使われるとは限りません。

寄付したお金がどのように使われるのかを把握し、自分が納得したうえで寄付先を決めることをおすすめします。

野良猫に「いいね」をしないことも重要

 多田さんは何をやりがいとして保護猫活動をされているのでしょうか。

「やっぱり一番のやりがいは、生命の危機にあるような状態の悪い子や自分でミルクを飲めないような子を健康にしてから里親さんに渡して、新しい家族の元で元気に暮らしている姿を見た時ですね。

活動を始めた最初の頃は、ほぼ自分の時間がゼロの状態でミルクのお世話をしていた子が夜中に急変し、動物病院に救急搬送したものの亡くなってしまうということも経験しました。辛い経験ではありましたが、自分にもっと知識や経験があったら助けられたのではないかという悔しさから知識量や経験を増やし、現在は当初よりも多くの猫ちゃんを助けられています。

 前述のようなボランティアというかたちで保護猫活動に参加しなくとも、日々のちょっとした行動が不幸な猫ちゃんを減らすことに繋がっていくといいます。

「たとえば、お家で飼っている猫ちゃんを避妊去勢して家の外には出さず、最後まで看取る。このことを一人ひとりがするだけでも、不幸な猫ちゃんを減らしていくことができます。また、猫が野外で暮らすことは自然なことではないという認識を持つことも重要です。SNSで野良猫ちゃんの写真に「いいね」を押さないことや、野良猫ちゃんにむやみに餌をやらないことで、世間のそうした意識を改変していく一歩になります。

その他、Amazonではペット用品の売り上げの一部を動物保護施設に寄付するといったキャンペーンを定期的に行っているので、そうした期間中はAmazonを利用するのも、保護猫ちゃんたちを救う方法のひとつです」

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猫カフェmfmf(モフモフ)

常駐スタッフ猫ちゃんと里親募集中の保護猫ちゃんが走り回る猫カフェ。
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営業時間:平日 13:00~20:00 休日 11:00~20:00

(文=いぬねこプラス編集部)

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(プロフィール)

多田 あさみ(ただ あさみ) 2008年よりタレントとして活動。2016年に「猫カフェmfmf」オープンし、猫の保護活動に従事。年間80頭等前後の猫の保護・譲渡。多頭崩壊レスキューや、離島の野良猫問題などにも取り組む。 趣味は食べ歩き、特技は釣り、魚を捌くこと。

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