獣医師奥田先生が解説、犬が咬むには理由がある! 身体の不調が隠れている場合も

2022/02/20 12:00

GettyImagesより

 「ウチの犬はなぜ自分を咬むのか?」と疑問に思う方も多いと思います。

前回の奥田先生の記事はこちら

「意味もなく咬んできます」「理由もなく、突然咬んでくるのです」と言われる飼い主さんも多くいます。しかし、ほとんどの場合、犬は何かしらの理由があって噛んできています。

 先日の相談では、飼い主さんが犬を膝の上であおむけに抱っこし(頭が飼い主の膝頭側、足が飼い主の腹側)、前足を拭いたら咬まれたというものでした。飼い主さんは「突然咬んできた」とおっしゃっていました。

 しかし、これは「突然」でしょうか?カウンセリング中に飼い主さんが同じ行為をしたところ、犬は明らかに顔を逸らし、身体を硬直させ、その状況に対して嫌悪感を抱いているボディランゲージを示していました。理由は明確ですね。

 飼い主さんが「突然」や「何も理由がないのに」と感じるのは、犬が発しているメッセージを受け取れていないからなのです。

防衛のために咬む

 犬に家族が咬まれる状況で最も多いのが、触られるのが嫌だった、抱っこされるのが嫌だった、フードなど自分にとって大切な資源を守りたかったなど、防衛的な原因での攻撃です。もう少し細かく理由を精査すると、恐怖心から咬む場合と、嫌悪感・不快感から咬む場合があります。

恐怖心からの攻撃

 恐怖心による攻撃は、体罰を用いたしつけを行っている場合によく見られます。犬は追い詰められて、自分の身を守るために攻撃します。

 犬には上下関係を教えなければならないと考えている人が多くいますが、力で押さえつける関係は、人と犬の本来の姿ではありません。体罰や恐怖心を用いたしつけを行うことは厳に慎む必要があります。

嫌悪感や不快感からの攻撃

 嫌悪感・不快感による攻撃は、飼い主が犬のボディランゲージを読めず、犬の気持ちが把握できない場合によく見られます。例えば、夜遅くに、犬が眠たいのにケージに入れずにリビングで自由にさせていて、ソファで丸まって休もうとしている犬を撫でようとしたときに咬まれるなんてパターンはよくあります。ブラシを無理やりかけることを繰り返した結果、ブラシを見せると唸るだけでなく、手で触ろうとしても唸るようになるという例もあります。

 フードを守る攻撃は、生得的に備わった気質が強く影響します。しかし、唸っている犬に対して、「唸らないの!」「ヴーじゃないでしょ!」など、余計な声掛けをし、プレッシャーを与えることで悪化させてしまうことはよくあることです。

身体や脳機能の異常の可能性も

 気を付けなければならないのが、身体的な異常や脳機能の異常での攻撃です。例えば身体の不調で痛みや不快感があり、触られたくなくて攻撃することは、しばしば見られます。特殊なてんかん発作など、脳機能の異常でも攻撃が発生します。その場合、見た目上、まったく理由となる出来事がなく攻撃が発生することもあります。身体の異常、脳機能の異常があるかどうかは、獣医師の診察を受けて、判断を仰ぐ必要があります。

 多くの咬みつきには理由がありますが、その理由を把握するには行動学的な知識が不可欠です。深刻な咬みつきに悩んでいる場合、一人で悩むのではなく、早め早めに専門家の助言を受けるようにしましょう。身体的な異常の可能性もあります。お近くの「獣医行動診療科」を受診されることをお勧めします。

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文=奥田順之

(プロフィール)

ぎふ動物行動クリニック院長。獣医行動診療科認定医・日本獣医行動研究会広報委員会委員長・鹿児島大学講師(動物行動学)。2012年NPO法人「人と動物の共生センター」設立し、犬のしつけ教室ONELife/ぎふ動物行動クリニックを開設。しつけ教室では、犬と人が共に育み合う=“共育”をモットーに、レッスンを実施している。

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