獣医師奥田先生が解説、犬の異常行動に注意 深刻な咬みつきの対処法は?

2022/03/24 21:00

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 前回の記事では、「飼い主さんが愛犬に咬まれたときに『突然』や『何も理由がないのに』と感じるのは、犬が発しているメッセージを受け取れていないからなのです」というお話をしました。

前回の奥田先生の記事はこちら

 今回は、咬む行動に身体疾患や異常行動が関与している場合に着目し、お話しします。

血が出る、縫うほど咬む原因

 愛犬が飼い主を咬んでしまうのは、飼い主にとって心も身体も深く傷つく事です。しかし、犬が飼い主を積極的に攻撃したくて咬んでいることは稀です。多くは、犬と飼い主のコミュニケーションのすれ違いから、咬む行動は発生しています。

 自分の身を守ろうとして、自分の大切な物(フード、おもちゃ、拾ったもの)を守ろうとして、嫌なことを避けようとして…。犬が咬む行動は、様々な動機づけで発生します。

身体的な疾患が原因になることも

 しかし、犬が咬むのは、必ずしも「コミュニケーションの問題」「しつけの問題」だけではありません。

 中には、関節に痛みがあり、敏感な部位を触られないように咬むということもあります。ホルモンの病気が咬む原因となることもあります。高齢になり目が見えにくく耳が聞こえにくくなり不安が強くなり咬むというパターンもあります。

 犬が咬む=「しつけの問題」と決めつけず、身体的な不調にも目を向けることが大切です。

異常行動と併発する咬みつき

 飼い主を咬むだけでなく、自分の尻尾や足を咬んでしまう犬もいます。このような自傷行為は、犬にとって正常な行動ではなく、異常行動です。

 飼い主を咬む場合でも、自分の身を守る、大切な物を守るといった目的が全く分からない咬みつきもあります。全く脈絡なく、なんの前触れもなく発生する咬みつきです。

 咬みつきは本来、身を守るといった目的のある行動です。その目的がない、脈絡がないとすれば、その咬みつきは異常行動かもしれません。

異常行動の例

 異常行動とは、犬の正常な行動から逸脱した行動や異常な頻度や程度で発生する行動を指し、具体的には以下のような行動が挙げられます。

・なんの刺激もないのに、常に不安を表すボディランゲージを示している
・ハエを咬むような行動を繰り返す
・尻尾を咬む、足を咬むといった、自傷行為
一点を見つめて動かないことがある
・全く脈絡なく攻撃行動が発生する

獣医師にしかできないこと

 咬む行動に身体疾患が関与しているかどうか「診察・検査」すること、異常な程度の恐怖や不安・脈絡のない行動に対して「薬物療法」を用いること、これらはいずれも獣医師でなければできない事です。

 咬む行動=「トレーナー・訓練士」とイメージしやすいですが、「しつけ」以外の問題を解決するためには、「獣医師」の関与が必要です。

獣医行動診療科の受診を

 咬む行動に悩んだ時には、獣医師の中でも、特に行動学に精通した獣医師が問題行動の診察を行う「獣医行動診療科」への受診をお勧めします。

 動物の身体の問題から心の問題まで、トータルに診ることができる獣医行動診療科は、飼い主さんと犬たちの絆を取り戻すためのパートナーになってくれるはずです。

「獣医行動診療科 お住まいの地域」で検索いただくと、見つけることができると思います。是非、一度訪ねてみてください。

文=奥田順之

(プロフィール)

ぎふ動物行動クリニック院長。獣医行動診療科認定医・日本獣医行動研究会広報委員会委員長・鹿児島大学講師(動物行動学)。2012年NPO法人「人と動物の共生センター」設立し、犬のしつけ教室ONELife/ぎふ動物行動クリニックを開設。しつけ教室では、犬と人が共に育み合う=“共育”をモットーに、レッスンを実施している。

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