多田あさみの「にゃんことの暮らしQ&A」第3回 子猫を拾ったらどうすればいい?

2022/03/30 12:00

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GettyImagesより

 タレントで「猫カフェ mfmf(モフモフ)」の動物取扱責任者である多田あさみさん。そんな多田さんが読者からの猫ちゃんに関する質問にお答えする連載が「にゃんことの暮らしQ&A」です。

 第3回目は「近所で子猫を拾ったのですが、自分の家で飼うことはできません。どのように対応すればよいでしょうか?」というもの。お家に連れて帰ったらまずやるべきことや、子猫を拾う際の注意点についてお話いただきました。

第2回目はこちら

子猫を拾ったらまず“保温”

 多田さんによると、3~4月といった春は多くの子猫が生まれる時期で、mfmfでも「子猫を拾った」との相談が増えるそう。

「子猫を拾った場合、まずはどの月齢の子でもなるべく早く動物病院に連れて行くという意識でいてください。交通事故などで酷い怪我をしている、点滴が必要なほど衰弱しているといったことが無ければ、最初は簡単な健康診断とノミやダニ、寄生虫の駆除で費用は3~4千円ほどです。

お家に連れて帰ったらまず、猫ちゃんが濡れていないか、汚れていないかを確認します。基本的に弱っている可能性があるので、体力を奪うシャンプーはNGなのですが、最初から濡れている場合と毛並みが羊水などで汚れている場合は、すでに低体温症の場合もあります。濡れたまま・汚れたままだとどんどん体力が奪われていくので早急、洗って完全に乾かす必要があります。

子猫は自分で体温調節ができない子が多いので、体を温めてあげることが重要です。温める方法としては、ペットボトルにお湯を入れたり、新しい靴下に生米を入れてレンジで1~2分ほど加熱するとホッカイロができます。

カイロの温かさは母猫の体温より少し温かいくらい、40度~45度くらいをイメージして、触ったときに「温かいな」と感じるくらいが目安です。

また、歯が生えていない、目が開いていない、耳が立っていないなど、授乳が必要なほどの赤ちゃん猫を拾った場合は、保温しながら2時間おきにミルクを与えないと低血糖になってしまう危険があります。お店が営業している時間であれば子猫用のミルクを購入して哺乳瓶やシリンジで与えたり、深夜でどうしてもミルクが手に入らないのであれば応急処置として、ブドウ糖やガムシロップを薄めて猫ちゃんの口に滴下するといった対応が必要です」

 コロナ禍により家にいる時間が増えたことで、自分でミルクを与えて赤ちゃん猫を育ててみようとする人も多くなったそう。しかし、未経験者の場合、途中で猫ちゃんが亡くなってしまう場合も多いと言います。

「赤ちゃん猫に哺乳瓶でミルクを与える動画をネット上で公開している人の影響もあり、『自分でもできるのでは』と自分で授乳をする方もいます。その志は立派です。しかし、ネット上には成功例しか上がりません。その裏では『途中でミルクを飲まなくなってしまった』『朝起きたら冷たくなっていた』という猫ちゃんが少なくないのです。

うちも何件か、お店で引き取る相談を受けていた方が、やはり自分で育ててみたいとなりましたが、すべてのお家が育てきれた訳ではありませんでした。

ミルクの授乳は、未経験の方がやるよりも経験者に任せた方が、猫ちゃんの生存率が上がります。なので、赤ちゃん猫を拾った場合は、速やかにミルクボランティアや、動物病院で世話をしてくれるのであればそちらに預けた方がいいと私は思います」

 お家に先住猫がいる状態で子猫を拾った場合、注意点はあるのでしょうか。

「先住猫とは、会わせない、見せない、接触させないことが原則です。拾ってきた猫ちゃんはノミやダニが付いている場合が多いです。感染症の検査もすぐにはできません。先住猫にも寄生虫がうつってしまう可能性があります。なので、飼い主さんは猫ちゃんを拾ったときに着ていた服なども着替えて手を洗ってから、先住猫に接するようにしてください」

エイズ白血病検査とワクチンは拾った人の役割

 動物病院に連れて行ったものの、その子を生涯、飼育することが厳しいのであれば、里親探しをすることになります。

「里親探しの方法として1番安全なのは、親戚や友達・知り合いなど自分の周囲で引き取ってくれる方を探すことです。それが無理なようであれば、インターネットを使って募集したり、mfmfのような保護猫のいるカフェや保護団体、里親探しをしている動物病院、近くの譲渡会などに相談をして里親を探してもらうことになります。

注意点としては、里親さんを探す場合は、エイズ白血病検査をしているか、ワクチンを打っているかどうかが重要になります。拾った猫ちゃんを飼育できない場合でも、この2つは拾った方にやってもらいたいです。特に団体やボランティア、保護猫カフェなど第三者に委託する場合には、「エイズ白血病検査とワクチンを打たせることはできるが、里親探しは知識がないのでそちらにお願いしたい」など、自分はどこまで出来て、どこからが出来ないのかを具体的に話すとやり取りがスムーズな上に、忙しい春先などでも力を貸してもらいやすいと思います」

 拾った猫ちゃんをそのまま自宅で飼える場合は、次のような点に注意が必要です。

「先住猫がいる場合、寄生虫の駆除、エイズ白血病検査、ワクチンが終わるまでは、お互いを引き合わせないようにしてください。

また、お外で生活していた猫ちゃんは、人間の食べ物をもらっていたり、ゴミ捨て場で生ごみをあさっていることがあります。人間の食べ物を食べ慣れている子は、人間の食べ物に執着し、パンや和菓子、炭水化物、保存食など猫が食べるイメージのない思わぬものを食べるので、飼い主さんは食べ物の管理には気を遣ってください。

その他、外にいた期間が長い子は屋外に対する恐怖心が薄いので、窓を開けっぱなしにするなどしていると、外に飛び出してしまうこともあります。脱走対策は入念にすることをおススメします。

なお、外で暮らす猫ちゃんに、保護のための捕獲目的などでなく食べ物を与えることは、保護活動の観点から言うと良いことではありません。人間から食べ物をもらうとその子は人間に慣れてしまい、虐待や交通事故に遭うリスクが上がってしまいます。また、その子を他の人が保護しようとしている場合、餌付けをしてしまうと捕獲用のワナに入らなくなるなど保護活動の妨害になってしまいます」

一人ひとりが出来ることを

「普段連絡を取ってない人から来るこの時期の連絡は、多くが子猫を拾ったというものです。春はどの保護猫カフェやシェルターさんも忙しく、確保できるスペース、たとえば、何日後にあの子を隔離スペースから集団生活ゾーンに移せるから新しい子を受け入れられる、今月は検査や治療に使えるお金がいくらあるなど、とてもシビアに計算しています。相談をされても、保護依頼のあるすべての猫ちゃんを歓迎できる余裕がないことは理解して欲しいです。

また、私たちのお店に掛かってくる電話の中には、「どこどこの公園に可哀そうな猫ちゃんがいるので助けてあげて欲しい。でも、自分は引き取れないし、病院代も出せない。猫ちゃんのために時間も使えない」という相談が少なくありません。

保護猫界隈では「命のリレー」「命のバトン」と言うのですが、猫ちゃんを保護して生涯育てることはできなくても、検査やワクチンを済ませた後はボランティアの方にお願いするなど、一人ひとりが出来ることをやって、みんなで猫ちゃんの命を繋いでいます。自分では何もできないのに「可哀そうだから助けてあげて」とこちらに丸投げをされるのは、正直、とても困ります。

猫ちゃんのために何もできないのであれば拾わずに、病院に連れて行ってあげる余裕がある人や、お家で引き取れる人が拾ってくれるのを願うという判断も必要だと私は思います。

もちろん、しっかり病院に連れて行ってくれたり、里親を探してくれる意欲的な方々も多くいらっしゃいます。過去に保護猫施設に猫の保護をお願いしたことがあるからと、何年も寄付を続けてくれている篤志家の方もいます。

そうしたことができるのであれば、何か困ったことがあった際はうちのような保護猫のいるカフェに相談したり、身近に猫を飼っている方に相談するなど、ひとりで何とかしようとせずに周囲を頼りながら猫ちゃんを幸せにしてあげてください」

猫カフェmfmf(モフモフ)

常駐スタッフ猫ちゃんと里親募集中の保護猫ちゃんが走り回る猫カフェ。
公式HP:https://catcafe-mfmf.com/index.html
公式Twitter:https://twitter.com/catcafemfmf
公式Instagram:https://www.instagram.com/catcafemfmf/
住所:神奈川県横浜浜市中区港町2-9-4 関内幸和ビル6F
営業時間:平日 13:00~20:00 休日 11:00~20:00

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今年の春の保護猫第一号たち

(文=いぬねこプラス編集部)

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【プロフィール】

多田 あさみ(ただ あさみ)
2008年よりタレントとして活動。2016年に「猫カフェmfmf」オープンし、猫の保護活動に従事。年間80頭等前後の猫の保護・譲渡。多頭崩壊レスキューや、離島の野良猫問題などにも取り組む。 趣味は食べ歩き、特技は釣り、魚を捌くこと。

文=いぬねこプラス編集部

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