新堂冬樹氏インタビュー 『虹の橋からきた犬』でペットロスからの希望を描く

2022/05/14 12:00

『虹の橋からきた犬』の著者、新堂冬樹氏(新堂氏提供)

 『ハチ公物語』――。言わずと知れた、秋田犬のハチが、亡くなった主人の帰りを渋谷駅前で待ち続けたという実話だ。主人の死から10年が経った1935年にハチは渋谷駅付近で亡くなった。ハチは今でもハチ公像として駅前で主人を待ち続け、多くの人に愛されている。

 犬と人間の物語は『ハチ公物語』のみならず、『南極物語』や犬の十戒をもとにした『犬と私の10の約束』など数多くある。そのどれもが涙なしでは観ることのできない作品だ。

 そんな犬と人間の物語において、新たな感動作が生まれた。新堂冬樹の『虹の橋からきた犬』(集英社文庫)だ。新堂冬樹氏はもともとメフィスト賞受賞作『血塗られた神話』(講談社文庫)で文壇デビューを果たし、『カリスマ』(幻冬舎文庫)や『溝鼠』(徳間文庫)などのハードボイルドなノアール小説で高い人気を得たベストセラー作家だ。

 しかしその一方で『瞳の犬』(角川文庫)や『168時間の奇跡』(中央公論新社)、そして『忘れ雪』(角川文庫)など犬に関係する泣ける小説でも大ヒットを飛ばしている。新堂冬樹氏には自身が大の愛犬家という一面があり、新作の『虹の橋からきた犬』は彼の実体験も含まれた物語となっている。

 帯の文言にある「ペットロスからの希望を描く小説」とあり、愛犬家のみならず愛猫家、ないしは動物愛好者全てに、涙を催させる内容となっていそうだ。

 そんな新堂冬樹氏に作品についてと動物と一緒に生きることについて、早速いぬねこプラス編集部はインタビューを敢行してきた。

<以下、インタビュー本文>

『虹の橋からきた犬』執筆動機はペットロス

――今作は発売前からAmazonでランキング入りするなど業界でも話題作となりましたが、執筆の動機はなんだったのでしょうか。

新堂冬樹(以下、新堂) 僕は3年前までスコティッシュテリアのブレットという名の犬を飼っていたんです。9年間も一緒にいたんですよ。まさにソウルメイトでした。でも悪性リンパ腫で亡くなってしまったんです。

 心にポッカリ穴が空いたようで……いわゆるペットロスに陥りました。

――9年も連れ添った愛犬との別れ…それは大変辛かったでしょうね。私も猫を飼っているので気持ちは痛いほど分かります。

新堂 今までずっとそばにいたのに、姿がないんですよ。ケージもあって、一緒に過ごした記憶もあるのにどこにもいない。信じられなくて仕事も手に付かないし、ずっとぼーっとしちゃうし……本当に苦しかったです。そんな時、霊視ができる先生と知り合ったんですよ。

――霊視……というと言葉が悪いかもですが、スピリチュアルやオカルト的な?

新堂 はい。信じるか信じないかはさておき、その先生に色々と話を聞かせてもらい、救われたんです。

――どんな話だったのですか?

新堂 犬というのは人間の病気や運勢的に悪いものを取り除く不思議な力を持っていて、ご主人様のそれらを自ら被り、虹の橋を渡る(※天国へ行くこと)そうなんですよ。悪いものを背負って行くからなんかひどいことにも聞こえてしまうのだけれど、犬からすればそれが当然で、ある意味任務でもあるんです。だから悪いことでもなんでもないらしいんです。

――ちょっとオカルト的な話ではありますが、犬の人間に対する従順さを考えると、どこか納得できる話ですね。でも人間の悪いものを取り除くのが任務とはいえ、やっぱりいなくなってしまうのは悲しいですよね。

新堂 ところがね、生前に心から慕った主人だった場合、すぐに虹の橋を渡ることなく待っていてくれるらしいんです。そこで主人を見守ってくれているんですって。だから実は側にいるんです。魂になったからこそ、すぐに戻ってきてくれもするんですよ。

――姿が見えなくても見守ってくれているなんて泣けてきます……。

新堂 もちろんスピリチュアルな話になるので信じる信じないはあるのですが、その話を聞いて僕はブレットを失った気持ちが救われました。だから動物の魂は死んだらおしまいじゃないんだよ、そばにいてくれるんだよってことをみんなに知ってほしかったんです。

愛犬との出会いはまさに人生の転機

――ブレットとの出会いは新堂さんにとっても人生の大きな出来事だったんですね。

新堂 はい。ブレットと一緒になって全てが変わりましたね。

 僕はそれまで100mの移動ですら車を使っていたし、体は鍛えていたけれど酒はバンバン飲むし、タバコは1日2箱以上吸うし、カツ丼なんか1日で3杯食べちゃうような生活だったんです。だから体も今と比べてかなり大きかったです。

 それが毎日パトロール(※散歩のこと)することで歩くようになったし、ブレッドにとっても副流煙が良くないからタバコもやめました。自分の体のことに気も使うようになったから食事も糖質制限を始めるようになりました。1年で70kg弱まで体重は落ち、体脂肪率も10%程度にまで落とせました。全てがブレットのために、自分が変われたんです。

――新堂さんは体型を驚くほどキレイに維持されているし、ブレットと会う前はそんな生活を送っていたなんて想像がつかないですね。
 
新堂 体のことだけじゃないですよ。それまで目的のためなら自分本位で動くのが当たり前で周囲への気遣いなんてまるでしなかったのに、相手を思いやれるようになりました。人に優しくなれたんです。それも全てブレットが教えてくれました。

新たな愛犬との奇跡的な出会い

――今は新しい子をお迎えしているそうですね。

新堂 はい。クロスっていうんです。

――クロスとの出会いは特別なものだったのですか。

新堂 ブレットがいなくなって、霊視の先生からも新しい子を迎えなさいと言われていたんです。でもなかなかそういう気にもなれなくて……。

 ところがある日、クロスに出会ったんです。ペットショップで売れ残りの子でした。僕と目が合った瞬間、抱きついてきたんですよ。しかもブレットの遺骨のペンダントを物凄い勢いでガシガシ噛むんです。最初は飼うつもりなんてなかったのに、一緒に暮らすことにしたんです。

 先生が言うには、ブレットが新しい子に僕のことを色々と教えてくれているそうなんです。そのためか、クロスはブレットの匂いのするものにもすぐに慣れたんです。ケージにもトイレにも。何も教えていないのにですよ。普通は知らない匂いがストレスになるはずなのに。

 今でもブレットのことをふと思い出すと辛くなったりします。でも、クロスの中にブレットがいるって瞬間を感じる時があるんですよ。

――まるで生まれ変わりですね。

新堂 ペットロスに苦しんでいる人たちには『虹の橋からきた犬』を通してこれらのことを知ってもらいたいですね。動物は死んだら終わりじゃないんだよって。

――動物と暮らすということは、いつか絶対にお別れとなる日が来ますからね……。

新堂 そう。だからこの物語を通して、その時の心構えをしてもらうというか、取り乱したりしないようにもしてもらいたいです。

「かわいいってだけで飼っちゃダメ」

――最近はブームということもあり、ペットロスについて共感する人は多いでしょうね。一緒に暮らしている人からすれば、ペットというか、家族ですし。

新堂 本当に最近は飼う人が増えましたよね。

――でも悲しいことに、その代わり遺棄やネグレクト、虐待、そして多頭崩壊なんかも問題になっています。

新堂 かわいいってだけで飼っちゃダメですよ。その子の一生を背負うんですから。

 人間は友達とか恋人とか、周囲にいるかもしれないけれど、動物からすれば主人だけしかいないわけです。だから我々人間も全愛情を持って接しなければなりません。

 動物と暮らすと大変なことが本当に多い。自分がどんなに疲れていようが飲んで酔っ払っていようが、給餌しなくちゃいけないですし、必要なら散歩にも連れていかなくちゃいけない。雨だろうが雪だろうがです。悪戯されて家具はすぐに傷むし、一緒に連れて行けなければ遠出もできなくなって長期間の旅行もできません。

 でも、こんな苦労を全てチャラにするくらい動物は人間に癒しや幸福感を与えてくれます。逆に、いま言ったこれらが少しでも辛いと感じるのであれば、絶対に動物を飼ってはいけないんです。

「政府はもっと動物を大切にすべきですよ」

――SNSなどで多頭崩壊の様子がよく出回って来るのですが、本当に心が痛む写真ばかりです。

新堂 多頭崩壊に関しては、簡単に言ってしまえば単なる無責任なんだけど、お金とか飼い主の健康問題とか、そこに至るまで様々な要因が絡んできますよね。だけど中途半端な優しさが一番良くない。ダメそうなら保護団体に相談するなど、早めに動いてほしいです。

――殺処分とかも信じられませんよね。

新堂 殺処分なんて人間の都合ですよ。そんなの政治でいくらでもなんとかなりそうじゃないですか。アベノマスクの配送料が10億円かかるとか、消化しきれていない予算があるってことじゃないですよね。億のお金があるなら施設だっていくらでも作れるはずです。先進国なのに、なんでそれができないんでしょうね。日本政府はもっと動物を大切にすべきですよ。

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文=いぬねこプラス編集部

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