ドーベルマン窃盗は正義だったのか? 哲学者が考える動物と人間の“対等性”

2022/05/28 11:00

ドーベルマン窃盗は正義だったのか? 哲学者が考える動物と人間の対等性の画像2

一ノ瀬正樹教授と「しずか」(左)と「牛若」(右)

 動物人間対等論は「(動物と人間は)対等なので、尊敬し敬愛するものにはそれに見合う態度で接し、攻撃してくるものには自己防衛をする」(一ノ瀬教授)という考えに基づく。

 すると、「盗みの実行者は犬に対する敬愛や尊崇の念を感じて実行に及んだのに対して、犬の所有者は実行者と同じようには犬に尊崇の念を抱いていなかった」(一ノ瀬教授)と考えられる。その上で、「現行法に基づく話を別とすれば、実行者が持っているような対等論的理解を実行者は社会に訴えて、それに基づいた法の改正や、あるいは現行法のもっと厳格な適用を訴える、という方向で動くのが正しい筋道なのではないか」というのが一ノ瀬教授の考えだ。

 動物愛護管理法では必要な世話を行わない、ケガや病気の治療をせずに放置するなど、やらなければならない行為を行わない場合もネグレクトとして虐待だと見なされる。しかし、それの厳格な適用がされているとは言い難いだろう。ただそこで、動物と人間が対等であり同様の敬意に値する存在者だということが意識されるようになれば、自ずと不幸なペットは減っていくはずだ。

 また、「犬は人間よりもはるかに道徳的に高潔」(詳しくは一ノ瀬教授のインタビュー記事)だという見方が浸透していけば、高貴な存在である犬を苦しめるようなことはできなくなるだろう。

 今回の事件を機に、犬の外飼いの是非はもちろんのこと、犬が受けるべき敬意、それに基づいた動物愛護管理法の厳格化などの議論が活発化することを願いたい。

文=いぬねこプラス編集部

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