獣医師である私が保護猫施設“専門”往診病院を開くに至った理由 

2022/06/11 11:00

GettyImagesより

 近年、動物愛護活動がメディアでよく取り上げられることもあり、“保護猫”という言葉が世間にも知られるようになってきました。

 しかし、言葉だけは耳にしたことがあっても“保護猫”というのが実際どういった猫たちなのかあまりよく知らないという方も多いのではないでしょうか。

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保護猫とは?

 “保護猫”という言葉に明確な定義はありませんが、一般的には飼育放棄・崩壊や飼い主がいない野良猫などそのままだと殺処分されたり、野生で亡くなってしまうという状況から文字通り“保護”された猫ちゃんたちのことを指します。

 保護猫活動とはそういった猫ちゃんを自宅やシェルターに引き取り、お世話をしながら新しい飼い主さんである里親さんを探すというものです。

保護猫施設専門への道

 私自身、獣医学部生だったころから保護猫活動のボランティアに参加していました。実は私の飼い猫も活動を通して出会った子をそのまま飼ったという経緯もあり、獣医師になる前から保護猫は身近な存在でもありました。

 獣医師となり保護猫活動から一旦離れていたのですが、ひょんなことから近くの保護猫施設さんにお伺いする機会があり、施設さんの実情を目の当たりにして自分で何かできることはないかと保護猫施設さんを専門に往診をする病院を立ち上げるに至りました。

保護猫施設の実情

 多くの保護猫施設さんはボランティアで成り立っているので物資、人手、お金、何もかもが不足しています。そんな中で例えばワクチン予防ひとつとっても一人で動物病院に連れて行ける頭数には限りがありますし、動物病院にかかる時間もかなりのものです。常に人手不足の施設さんでは一人抜けるだけでも施設でのお世話が回らないといった状況になることもしばしばです。

 しかし、獣医師である私が施設さんに伺う形を取れば一度に何頭ものコに処置することができますし、病院での待ち時間もありません。何よりも施設から人手が抜けるということがなくなるので施設側から考えてもメリットが多いと思っています。

 あくまで往診の形なのでできる検査や処置は限られていますが、それでも施設さんの負担が減るのであれば今後もできる限り協力をしていきたいですね。そうすることで施設さんも譲渡会や里親さん探しにより注力することができ、それが保護頭数増加につながり、殺処分数を減少させる、そんな流れの一助になればと思っています。

多頭飼育崩壊の惨状

殺処分の現状

 では一体毎年どれくらいの猫が殺処分されているかご存知でしょうか。環境省の発表によると、令和2年度の1年間の殺処分数は19,705頭でした。保健所や動物愛護センターでの殺処分数は年々減少傾向にありますが、それでもゼロにはほど遠いというのが現状です。殺処分数が減少している背景には保護猫活動が世間一般に知られ、保護猫をおうちに迎えようとする里親さんが増えたということがあると思います。

 しかし、日本ではまだまだ多くの方がペットショップで買うという選択をしてしまいます。猫を飼う=保護猫の里親になるという考え方がもっと広く社会に浸透し、いつの日かそれが当たり前になることを願っています。それは一朝一夕では難しく、課題も多いですがそんな日に向けできることからやっていきたい、そう思いながら私は今日も施設に赴きます。

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文=長谷川諒

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