多頭飼育の一軒家を保護猫シェルターに NPO代表と往診獣医師インタビュー

2022/07/10 12:00

長谷川獣医師(左)とねこひげハウスの石川代表(C)いぬねこプラス

 いぬねこプラスに執筆いただいている獣医師の長谷川諒先生は、保護施設専門往診病院「レイクタウンねこ診療所」の院長でもあり、保護猫活動を支援しています。そこで今回、長谷川先生が往診診察を始めるきっかけにもなったという埼玉県八潮市にある動物保護施設「ねこひげハウス」を一緒に訪れ、代表理事の石川砂美子さんにこれまでの活動内容や日本の動物保護やボランティアに対する意識など、抱える課題をお伺いしました。

<以下インタビュー>

――動物保護施設の運営を始められたきっかけは何ですか
石川代表(以下:石川) 10年前、飼い猫を連れていった動物病院の待合室で、現在の施設となった一軒家に住む飼い主さんにお会いしたのがきっかけです。その方は年配の男性で、猫5匹を連れていたのですが、話をすると家に100匹を超える猫がいることがわかりました。動物を集めてしまうアニマルホーダーの方で、当時お宅にお邪魔する機会を得たのでしたが、お伺いした時は私が把握できた数だけで170匹はいたのです。とにかく汚い、臭う……。最初はお手伝いをすることから始めたのですが、飼育環境の悪い中で生活をする猫ちゃんたちをなんとか救いたい、という一心でした。それまでボランティア活動をしたこともありません。ボランティアのボの字もわからないような状況です。

――目の前の猫をなんとかしたい、という思いから始まったと思うのですが、大変なことも多かったのではないですか

石川 元飼い主さんは、多頭飼育崩壊の状況を理解しておらず、「とにかく猫たちを手放したくない」という思いが強い。ここが一番苦労しました。話はずぅーーと並行線。そこで任意の動物愛護団体をつくる(今はNPO法人ですが)ことにしたのです。猫の所有権を得たことは本当に奇跡だなと思います。

――長谷川先生との出会いはいつですか

石川 2年前に個人で猫のボランティア活動をされている知人を介して知り合いました。八潮市では他に往診してくれる動物病院がないので困っていて、知人に相談したところご紹介いただいたのです。

長谷川先生(以下:長谷川) 保護猫活動はあまり仕事という感じではしていません。もともと自分が今飼っている子も獣医学生の時に保護猫活動を通して出会った猫なので、獣医師になる前から保護猫は身近な存在でした。獣医師に成り立ての頃は勉強などで忙しく保護猫に関わる活動はできていなかったのですが、ちょうど2年前ぐらいに働き方に余裕ができたぐらいの時にタイミングよく知り合ったのがねこひげハウスさんです。動物保護施設の中に入ってガッツリ活動することはそれまでなかったので、最初は「すごい頭数がいるな」と思いました。

石川 動物病院に通うとなると時間や労力がかかるので、往診に来ていただけるのは大変ありがたいです。また、10年経って8割の猫がシニアになった現在、シニア期の看取りも多いです。一般の猫を飼っている方が求める動物医療ではなく、シェルターメディスンの考えを理解していただける獣医師さんは少ないですし。

――日本における動物愛護を取り巻く環境をどう捉えていますか 10年経って変わってきましたか

石川 日本は動物愛護後進国。動物愛護管理法もちょっとずつ変わってきているけれどまだまだ……。でも変化があることはいいことだと思っています。一人ひとりの意識が底上げしたら変わっていく。たとえば、アニマルホーダーって聞いたことない人が多い。そういう言葉が広がって、それは一種の精神疾患、病気だという意識が広がって、アニマルホーダーの場合動物が飼えないとかになっていったらいいと思います。

 さらにNPO法人は動物愛護団体だとお金が出ないので、寄付などを募り自活しないといけない。その割に依頼はひっきりなしにあるので、時間も資金もすべてがパンク状態。理想は、動物愛護団体がなくなること。誰もやってくれないからみなさんやっているし、動物愛護団体の数も多すぎると思います。それだけ困っている犬猫が多いとも言えますが、みなさん仕方なくやっているのです。そもそも保護される犬猫がいなくなれば動物愛護団体はなくなるので。ただ、東京の犬に関する動物愛護団体の数は減っていると聞きます。その中でも運営し続けている団体は地方からの犬や猫を引き受けているという話もありますし。ただ、猫はまだまだですね。

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