多頭飼育の一軒家を保護猫シェルターに NPO代表と往診獣医師インタビュー

2022/07/10 12:00

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――今年の保護猫の受け入れ状況はいかがですか

石川 ねこひげハウスでは、成猫の傷病猫を多く引き受けています。そのため数は他の団体さんに比べ減るのですが、今年になってからは15匹ぐらい保護しました。そのうち3匹は市役所から連絡がきたものです。高齢の飼い主の方が亡くなって、「最初は親戚の方が通って面倒を見ていたがもう通えない」といったケースなどです。高齢者が残したペット問題は、社会問題だなと思っています。高齢者が飼っている猫はシニアのケースが多く、子猫よりも譲渡のハードルが上がるため、シニアを引き取る団体もそう多くないといった現状があります。

――里親募集、成猫の譲渡状況はいかがですか

石川 譲渡数は昨年で10匹ほどです。成猫の場合は数カ月に1回のペースで里親さんが決まるといった状況です。何歳でもあきらめずに里親も募集していますが、ハードルは上がってしまいます。ただ、最近は高齢の方が「シニアの猫を迎えたほうがいいと聞いて」とお問合せしていただくケースもあります。そんな時にはやっぱり意識が変わってきたな、と実感します。とは言え10~15歳となるとなかなか決まらないですね。あと、持病がある子もほぼほぼ決まらない。中には、それでもと言って下さる方もいます。里親さんには最上級のサポートを望んでいるのではなく、最低限はやってほしいな、って思いですかね。病院には連れていってほしいとは思います。

長谷川 病院にまったく連れていかないという人は少ないように思います。ただ、中にはもうちょっと早く連れてきてほしかった、ということはあります。その辺りのことをある程度しっかりと面倒見てくれるおうちならば、もちろん人となりを見てですが、成猫や持病持ちの子でも譲渡したほうがいいとは思います。

――行政に求めることはありますか

長谷川 行政ができることは限られていますよね……。T(Trap/トラップ/捕獲)N(Neuter/ニューター/不妊手術)R(Return/リターン/猫を元の場所に戻す)でも急、しかも夜とかに活動しなくてはいけない場合も多々あるので、行政での対応はなかなか難しいですよね。そういった活動をしている団体さんやNPO法人に支援金を出すとかが限界というところもあるのではないでしょうか。

石川 譲渡会場として使う場所を貸してもらえないかと交渉したことがありますが、八潮市の場合、市役所内は無理。さらに社会福祉協議会でも無理。だけど駐車場はOKですとの回答を得たことがありました。ただ、駐車場だとテントを立てるところから始めなくてはいけないなど大変なので、結果的にお断りしました。もう少し、協力してもらえたらと思うこともありますね。ただ、八潮市については、どうぶつ基金から行政枠のチケット(提携病院にいけば保護猫の避妊去勢ができるチケット)を2年ぐらい前から取り寄せてもらえるようになったのでありがたいです。

――長谷川先生みたいな保護猫シェルター往診専門の獣医師さんは多いのですか

長谷川 直接の知り合いではいないですね。保護猫施設さんへの往診だけでやっているのは珍しいとは思います。ただ、地域の動物病院として保護猫も分け隔てなく診ている先生も数多くいらっしゃいます。

――動物愛護団体さん同士の横のつながりはあるものですか

石川 私はわりかし幅広くお付き合いをしている方だと思いますが、団体同士は考え方の違いでぶつかることが多いとも聞きます。個人的には野良猫の情報共有などは大事だと思っていて、八潮市には4つの団体があり情報共有はできています。ただ、そのような情報共有もできない地域があるという話も聞くので……。皆さん忙しくてがむしゃらにやっていて、そこがまとまるって難しいのかな、と思っています。

――獣医師さんの方では保護猫ネットワークはありますか

長谷川 グループ病院ではない多くの病院さんは個人個人で経営されているので、あまり横のつながりは厚くはなく保護猫に対するネットワークみたいなものはあまりありませんね。

――ボランティア活動に対して思うことはありますか

石川 ボランティア活動はできないけれど、犬や猫のために何かしたいと考える人は多いと思っています。ただ日本はボランティアや寄付文化が根付いてない。寄付金が動物に与えるご飯代など直接的なものに使われるのはいいが、団体の運営費に使われるのは嫌だといった声も聞きます。ただ運営をしていかないと動物のお世話ができないので、団体の運営費を含めて応援していただけるという意識になってくれるとありがたいな、とは思います。

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文=いぬねこプラス編集部

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