身勝手な理由で捨てられ保護されるうさぎたち 「イメージと違った」「懐かなかったから」

2022/11/04 15:00

SAVE THE RABBITSより

 昨今、ペットとしてうさぎを飼うという選択肢は珍しくなくなった。一方で、うさぎそのものや、飼い方について正しく知られていないがゆえに、飼育放棄や遺棄、多頭飼育崩壊といった問題が起きているのも事実だ。

 兵庫県宝塚市を拠点として活動している一般社団法人WILL&LOUIS(SAVE THE RABBITS)は「保護うさぎを誕生させない世の中」を目指し、うさぎの知識や飼い方の啓発、保護うさぎの譲渡を行っている。熊谷彩代表にうさぎが保護される背景や、うさぎを飼うことのイメージと現実のギャップなどについて伺った。

【プロフィール】
熊谷彩(くまがや・あや)

一般社団法人WILL&LOUIS(SAVE THE RABBITS)代表。
2011年にうさぎを飼い始める。知人を通じてうさぎの飼育放棄を知り、その際、WILL&LOUISの前身のNPO法人に保護を依頼し、保護うさぎの問題に直面。
問題意識を持ち、同団体に通い続け信頼関係を築き、スタッフとして手伝いをするようになる。NPO法人解散後の2019年に一般社団法人WILL&LOUISを設立。

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うさぎの生態や飼い方について正しく知られていない

——WILL&LOUISではうさぎの生態や飼い方の啓発活動を行っているとのことですが、なぜそうしたアクションが必要なのでしょうか。

 前提として、うさぎを飼う人が増えています。動物病院でもうさぎが目立って多くなってきている病院もあります。一方で、飼い主の知識が不足していて、飼い始めたときに「思っていたのと違う」とおっしゃる方が多いのも事実です。

 うさぎについて学ぶ機会もなく、昔の「学校のうさぎ小屋」のイメージのまま情報がアップデートされていない方も少なくありません。そのため、庭や玄関先など、うさぎの健康を考えれば望ましくない環境で育てられていることもあります。

 「犬が飼えないからうさぎを飼うことにした」というケースは珍しくないのですが、うさぎと犬ではそもそも生態が違うので、そこを理解しておかないと「思っていたように懐かない、思っていたように躾ができない」とそれが原因で手放す人もいます。

——うさぎについて知識がないことが、飼育放棄や遺棄につながっているのですね。

 そうですね。また、犬や猫に比べて購入のハードルが低く捉えられがちだとも思います。金額もですし、「飼うのが楽」というイメージがあるからか、ペットショップで見て気に入ったので、その日のうちにお迎えするケースも犬や猫に比べて多いように感じます。

 また、うさぎの場合、「大きくなったのでペアで5,000円」などの安売りがされていることがあります。飼い始める方も、「ペットショップで二匹で仲良くしていたから」「一匹だと寂しいだろうから」と比較的安易な理由でペアで購入してしまうんです。ペアで購入した場合、オス・メスだと繁殖リスクが明確ですし、うさぎは縄張り意識が強いので、仲良くできないことがあり、手に負えなくなってしまう人もいます。

——うさぎの繁殖力の高さとはどのようなものでしょうか。

 うさぎのメスは生後4ヶ月になると出産が可能になります。交尾時間は30秒〜1、2分と短く、猫と同じで交尾後に排卵するためほぼ確実に妊娠します。尚且つ、出産したらすぐに次の妊娠が可能となり、短期間であっという間に増えてしまい、結果、多頭飼育崩壊を招くこともあります。

——WILL&LOUISで保護されるうさぎはどういった経緯で来た子たちなのでしょうか。

 私たちは保護活動をメインに行っているわけではないので、飼えなくなったうさぎの引き取りは基本的にはしていません。行政から来た子、「捨てられている」というご相談をいただいた子、中にはやむを得ない飼い主の都合という子もいます。捨てられていた場所は、人目につくような場所もあれば見つからないように隠すように捨てられていることもあります。どちらにしても見つからずに死んでいくうさぎの方が多いかもしれません。

「楽に飼える」「しつけができる」誤ったうさぎのイメージ

SAVE THE RABBITSより

——「うさぎを飼うこと」のイメージと現実のギャップについて詳しく教えていただけますか。

 ちいさい、ふわふわしてる、ぬいぐるみのようにじっとしていて鳴きもしない、餌があればケージの中に入れて簡単に飼い始められる……このようなイメージをよく聞きます。

 実際は数カ月で大きくなりますし、ケージの中から出して運動させる必要もあります。単に部屋に放してあげればいいのではなく、うさぎの手足には肉球がなく毛で覆われているためフローリングは滑ってしまい足腰に負担がかかります。カーペットを敷くなど歩けるための環境調整もしなくてはなりません。食事もにんじんが好きというイメージが強いですが、基本は牧草を食べています。にんじんは好き嫌いもあって食べないうさぎもいますし、あくまでもおやつになります。

 躾ができると思っている人も多いですね。うさぎは賢い生き物ではあるものの、犬のように何か悪いことをしたときに叱って覚えさせることはできません。うさぎが何か悪いことをしないように、人間が先回りしてガードをするのが基本です。

 たとえば、トイレも「ここでしなさい」という躾は難しく、うさぎが自分でトイレの場所を決めるのでその習性を利用してトイレの容器を置きます。おしっこは場所を決めますが、うんちに関しては基本はあちこちでします。ケージから出したら部屋でもあちこちとうんちを落としていきます。それはうさぎが草食動物であること、常に食べ続けて消化管が動いているためです。そういった習性を理解してあげてほしいと思います。コード類や紙類なども、うさぎがかじらないように先回りして対策します。それを知らないがために「言うことを聞かない」「うんちやおしっこをあちこちにして困る」など、思ったより手がかかる印象を抱くのではないでしょうか。

 また、うさぎを診られる動物病院がかなり少ないことも、あまり知られていません。「うさぎも対応できる」と書かれていても、詳しくは診られない病院もあります。なので、うさぎを飼う際には事前に、うさぎを診られる病院が生活圏にあるか調べることも重要ですね。

——実は私も約20年前にうさぎを飼っていたのですが、当時は飼育本に「うさぎは抱っこが嫌いな子が多い」という情報も載っていなかったような気がします。どうやって正しい飼い方情報を入手すればいいのでしょうか。 

 著者によって少しずつ見解は変わりますが、なるべく新しく出版された飼育本を読むことをオススメしています。

 20年前の飼育本に抱っこが嫌いな子が多いことが書かれていなかったのは、愛玩動物として今ほど認知度がまだ高くなかったのかも知れません。その頃は飼育小屋や庭で飼うイメージが強かったと思います。私がうさぎを飼い始めた約10年前でさえ、「うさぎの飼育方法はまだ確立していない」と言われていたくらいでした。年々情報が変わってきているので、なるべく新しい飼育本を購入してください。

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