保護猫シェルター併設カフェ・すあま商會の誕生秘話(取材前編)

2022/11/10 15:00

奥に見える部屋が保護猫シェルター(提供:すあま商會)

 板橋区・大山駅からほど近い場所にあるカフェ『すあま商會』。コワーキングやカフェとして利用できる店内には保護猫シェルターが併設されています。いわゆる入場料を払って猫たちと触れ合うことを目的とした「保護猫カフェ」とは一線を画すユニークな経営形態。これからこの『すあま商會』をとりまく猫たちの物語をご紹介していきます。

保護猫シェルターを併設したカフェ、オープンまでの道

ーー記念すべき第1回は、このお店ができた経緯をすあま商會店長にお聞きしし、その魅力に迫ります。

「もともと保護猫カフェをやりたかったというわけじゃないんです。私自身も家で今年16歳と17歳になる猫を飼っているのですが、彼らとは別に、シェルターから来た病気の保護猫のお世話をしていました。私の書斎を隔離部屋にしてそこで看ていたのですが、その部屋で最後に看ていた子が一番症状が重くて。先天性なのか後天的なのかは分かりませんが、尿道と直腸がくっついてしまっている状態の子でした。

常に粗相をしているような感じで、その度におしりを洗っては1日に5、6回部屋を丸ごと掃除して……という生活をしていました。うちの子たちの特に雄の方が他の猫が嫌いで、室内を歩けるようになった保護猫を襲ったり隔離部屋の扉を夜通しガリガリ引っ搔いたりと、いよいよ猫たちにとっても人間にとっても良くない状況になったので、別の場所で保護猫用の部屋を借りて、そこへお世話に通おうと思い立ちました。部屋を借りると出費だけですが、もしそこで収入があればもっと保護猫活動を充実させることが出来るんじゃないかと思い、保護猫シェルターを併設したカフェを開店させることにしたんです」

コロナ禍の真っ只中にオープン

(提供:すあま商會)

ーー出店を決めたのは2020年10月のこと。世の中はコロナ禍の真っ只中でした。

「まあ、暇だったので(笑)。私はライター業をしていますが、ちょうどコロナ禍で出張もなくなり、当時は雑誌より取材がそれほど多くない書籍の仕事がメインだったので、お店を事務所としても活用できると思いました。コロナ禍でお酒メインのお店などは厳しそうでしたが、外出したときにコーヒー1杯を飲めるようなお店があるといいなと思って」

ーーそうして2021年2月にすあま商會はオープンしました。出店を決めてわずか4カ月というスピードです。

「本当にあっという間に作りましたね(笑)。もし夜中でも地震とか事故があった時に駆け付けられないと困るので、自宅近辺でいくつも物件を見て回りました。2階以上の物件で税金が安いと聞いた区などを重点的に探しましたが今ひとつ決め手に欠けたので、半ば投げやりで範囲を広げてネットで検索したら、元々印刷会社だったこの物件が目に入ったんです」

(提供:すあま商會)

ーーすあま商會が開店したのは駅から数分の建物の2階。たしかに路面店よりは見つけづらいように思えますが、それには理由がありました。

「路面店だと猫を捨てに来る人がいるという話を、実際にお店を経営している方から聞いたことがあったんです。他にも嫌がらせで窓ガラスが割られて猫が飛び出してしまうとかいろいろな危険が考えられますし、いたずらや嫌がらせにしても面倒くさければ実行に移す人は減ります。『隠れ家みたい』と言われることもよくありますが、2階だとか階段が急なのも、そういったメリットがあったりします(笑)

また、うちは飲食業の営業許可を取得し第二種動物取扱業の届け出をしています。展示や販売を目的としたペットショップや保護猫カフェとかは第一種動物取扱業になるのですが、シェルターは第二種の取り扱いになります。10匹以上いるシェルターには届け出が必要なんですが、当初うちは5匹と決めていたので第二種を届け出る必要さえなかったのですけれど、やっぱりこういう形態のお店をやる以上、色々なことを言う人がいるので取っておこうと思いましたが、正解でした。大きな組織なら話は別ですが、基本は私一人なのでとにかく安全に安全にと考えています」

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