愛猫の食事療法を飼い主が自己判断で始める危険性【獣医師監修】

2022/11/24 11:00

pixabayより

 「猫は年を重ねると腎臓病になりやすいってよく聞くから、うちの子は若い時から腎臓病療法食にしてるの」。日々の診療の中で飼い主さんのこういった声をしばしば耳にします。もちろん良かれと思ってやってらっしゃるのですが、その熱心さが裏目に出てしまうこともあります。今回は食事療法を飼い主さんの判断で始めてしまう危険性についてお話しします。

そもそも食事療法とは?

 食事療法とは病気や健康に不安がある状態を食事で治療する方法で、この時に使うフードがいわゆる“療法食”です。療法食は栄養成分の量、比率の調整や、原材料に特殊な加工をして製造され、獣医さんの診断や指導に基づいて処方されるものです。つまり言うなれば、療法食は病気の治療のために獣医さんが処方する“薬”のようなものなので飼い主さんの判断で食べさせるには危険なことがあります。

いったいなにが危ないの?

 一言に「危険がある」と言われても食べるフードが少し違うぐらいでいったい何が危ないの?と思われる方も多いのではないでしょうか。ここでは2つ例をご紹介します。

・腎臓病療法食
 高齢の猫で多い慢性腎臓病、その進行を抑える食事の栄養バランスとしてタンパク質を制限した方が良いとされているので腎臓病療法食はタンパク質含有量が極端に少なく設計されています。腎臓病の進行を抑えるためには、この食事療法が中心になりますが、これを若くて健康な子が食べ続けるとなると当然問題ありです。体を作る上で必要不可欠なタンパク質の量が少ないので、筋肉が維持出来なくなってしまい痩せる原因になりかねません。

・ダイエット食(減量食)
 愛猫が肥満かどうかの判断はおうちでは意外と難しいもの。体重の数字だけを見て飼い主さんは肥満だと思っていても、実際は身体が大きいだけで全く肥満ではないなんてこともあります。この勘違いをしたまま肥満でない子にダイエット食を続けてしまうと必要なエネルギー量が足りなくなりみるみる痩せてしまう原因になることも。エネルギーが足りない、飢餓による痩せは肝臓など様々な臓器に負担をかけ、そこから新たな病気を引き起こすこともあるのでくれぐれも注意しましょう。

かかりつけの先生とまずは相談

 病状に応じて動物病院で獣医さんに指示してもらう療法食、飼い主さんの自己判断で与える危険性をおわかりいただけたでしょうか。

 こういった理由から本来、療法食は動物病院で指導、指示の上で購入していただくものなのですが、残念ながら近年ペットショップなどで普通に買えてしまうところが増えています。もちろんペットショップでは購入にあたり獣医さんの指導やきちんとした説明がないので療法食の不適切な使用が広まってしまいます。

 見た目にはそれが療法食なのか総合栄養食(一般食)なのかわからないという場合はパッケージの表記やラベルを見ると一目瞭然。療法食にはきちんと「食事療法食」や「獣医師の指導のもと与えてください」と明記されています。

 療法食には療法食の、総合栄養食には総合栄養食の長所短所があるので安易な判断で始めずに、愛猫に一番合ったフードはなんなのかまずはかかりつけの獣医さんに相談しましょう。

文=長谷川諒

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