猫エイズを正しく理解していますか?りんご猫など豆知識も紹介【獣医師監修】 

2022/12/19 20:00

GettyImagesより

 “りんご猫”(※1)という言葉を耳にされたことありますか?りんご猫とは造語で猫エイズウイルス(FIV)に感染している猫を意味します。エイズと聞くと怖い病気のイメージがありますが本当にそうなのでしょうか。今回は猫エイズとそれを取り巻く環境について解説します。

猫エイズってどんな病気?

 正式名称は猫後天性免疫不全症候群と言われ、猫エイズウイルスの感染によって発症する病気です。一度このウイルスの感染が定着すると、その猫は生涯にわたってウイルスを持ち続けるいわゆるキャリアになりますがこの段階では何も症状はありません。

 しかし、”発症”をしてしまうと免疫機能が極端に低下する易感染性を示します。易感染性とは普段の免疫力があれば病気の原因にもならないような微弱な病原体にも感染をしてしまう日和見感染を起こしてしまう状態で生命を保つ上で極めて危険と言えます。その他にも重度の口内炎や貧血、下痢、腫瘍性疾患など命に関わる様々な症状が見られることが多いです。

知っておきたい基本知識

・ヒトや他種の動物には感染しない
猫エイズウイルスは猫同士でしか感染しないウイルスなのでヒトや犬などの他種の動物に感染することはありません。また反対にヒトのエイズウイルスも猫に感染することはありません。

・出血するようなケンカ傷で感染する
感染経路は咬傷であることがほとんど、キャリア猫による出血するような咬み傷で感染します。猫エイズウイルスは感染力があまり強くなく、空気感染や接触感染はしない病原体です。つまり室内で飼育していてキャリア猫と会う機会がなければ基本的に感染リスクはほぼゼロとなります。

・発症せずに天寿を全うすることも多い
りんご猫を知るにあたって一番大切なことは、発症しないまま平穏に過ごすことができる場合も多いということです。猫エイズとはどんな病気なのか上記の説明だけを見るととても怖い病気のように見えますが、近年ではその考え方も少しずつ変わってきています。感染してから発症までには10~15年ほどかかるとも言われ、猫エイズウイルスのキャリアではあるが、その病気に苦しめられることのない生涯を送り天寿を全うすることができる猫ちゃんも多く見られます。かつて言われたほど怖い病気ではなくなってきているのかもしれません。

りんご猫との暮らし

 猫エイズウイルスのキャリアであるりんご猫、だからといって特別な治療や生活が必要というわけでもなく、他の健康な猫ちゃんたちと変わりない生活を送ることができるのです。いまだに“エイズ”という響きからなのか、りんご猫だというだけで譲渡率が下がるということをよく耳にします。猫エイズのこと、りんご猫のこと、もっとたくさんの人に知ってもらいたいですね。

注釈※1
“りんご猫”とは保護猫に関する様々な活動をしているネコリパブリックが作った造語です。12月1日の世界エイズデーに合わせて、毎年12月12日を「世界りんご猫デー World Apple Cats Day」としエイズキャリアの猫に対する正しい知識の啓蒙活動が実施されています。

文=長谷川諒

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