獣医師が明かす、ペットの飼い主がやりがちな抗菌薬の誤用は要注意

2023/01/27 20:00

GettyImagesより

 「ペットの調子が悪そう……」なとき、動物病院を受診するとお薬を処方してもらうことも多いかと思いますが、用法用量をきちんと守っていますか?お薬にもいろいろな種類がありますが、中でも抗菌薬は特に注意が必要。誤った用法で飲ませるとお薬が効かない以上に厄介な目に遭う可能性があります。今回はそんな抗菌薬の気を付けるべきポイントと薬剤耐性菌についてお話しします。

そもそも抗菌薬って?

 抗菌薬、またの名を抗生剤や抗生物質などと呼ばれることもありますが、細菌をやっつけたり、増殖を抑えるために使われるお薬です。
古くから知られる代表的な薬としてはペニシリンが有名ですが、現在では様々な系統の薬が開発されています。抗菌薬は肺炎や膀胱炎など細菌感染が原因となる病気の治療には必要不可欠で、この薬なしには治療ができないこともしばしばですが、近年この抗菌剤の将来が危ぶまれています。一体何が危ないのでしょうか?

用法・用量は守りましょう

 動物病院で処方された抗菌薬、こんな飲ませ方していませんか?
・処方された日数より短く終了して残りはとっておく
・なんだか調子が悪いので家に残っていた抗菌薬を少しだけ飲ませた
・1回量を処方されたより少なく飲ませていた
・1日2回の薬を勝手に1日1回に減らした
心当たりがある飼い主さんはいますぐやめてください!

 こういった飲ませ方では治ったように見えても治りきらなかったり、再発してしまう可能性も十分にあります。抗菌薬を飲むと体内で悪さをしている病原菌をやっつけることができますが、飲んですぐにその全てをやっつけるわけではありません。飲み始めてから徐々にその数は減っていきますが、病原菌も様々な手段を使って薬から生き延びようとします。そのため途中で飲むのをやめたり、少ない量を飲んでいると中途半端にしか効かず、病原菌は再び増殖し病気の再発につながってしまいます。しかし本当の恐怖は“再発”ではなく、“薬剤耐性菌”が生まれるリスクが上がるということにあります。

なにが怖い?薬剤耐性菌

 薬剤耐性菌とは抗菌薬に対して耐性がある、つまり抗菌薬が効かないのでやっつけることができない細菌のこと。ある1種類の抗菌薬にだけ耐性がある場合は、他の系統の薬を使うことで戦うことができますが、たくさんの抗菌薬に耐性を持つ細菌が増えると今の医療ではなす術がありません。これは動物医療だけではなくヒト医療にも共通する問題で、このままのペースで薬剤耐性菌が増えていくと近い将来、“がん”で亡くなるよりも多くの数のヒトや動物を苦しめることになると言われています。

適正使用の大切さ

 症状が良くなったからといって途中で抗菌薬を飲むのをやめたり、減らしてしまうと病気がきちんと治らず再発する恐れもあります。また、しばしば飼い主さんから耳にする“残った薬を取っておいて期間を空けてから飲む”ことは、きちんと効かないだけでなく薬剤耐性菌を生むリスクに直結します。ヒト医療、獣医療ともに大きく関わり他人事ではない抗菌薬の使い方、薬剤耐性菌を生まないためにも用法用量はきちんと守り適正使用を心がけましょう!

文=長谷川諒

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