保護猫と触れ合えるカフェ「すあま商會」誕生のきっかけとなった猫

2023/02/03 18:00

すあま商會より

 板橋区・大山。東武東上線大山駅からほど近い場所にある保護猫シェルターを併設したカフェ『すあま商會』。第1回、第2回とすあま商會の魅力をお伝えしましたが、第3回からはすあま商會をとりまく猫たちの物語をみなさんにご紹介していきます。今回はすあま商會ができるきっかけとなった猫、ゆづくんです。

11階のベランダで発見されたスコティッシュ・フォールド

 3月のまだ肌寒いある日、とある保護団体に「マンションの11階に猫がいる」という通報が入りました。保護団体のスタッフが向かうと、マンションの11階のベランダにいたのはスコティッシュ・フォールドの男の子でした。高層階の手すりなどを歩くには不向きと思われる種類の猫が、一体なぜ、そんなところにいたのか、どうやってそこに来たのか。そのスコティッシュ・フォールドの男の子は、うんちやおしっこが垂れ流しの状態でした。

 当時、ちょうどその保護団体のシェルターに週1回ほど掃除のボランティアとして参加していたすあまさん(現:すあま商會店長)は、シェルターでその子と出会いました。通報をした方の「保護してほしい」という要請でシェルターに保護はされたものの、そこで風邪に感染してしまい顔は目ヤニと鼻水でグチョグチョ、お尻は排泄物でベトベト。すぐに病院に連れて行くように保護団体にお願いしますが、ひと月ほどのうちに最初は普通の顔だったそのスコティッシュ・フォールドはどんどんみすぼらしくなり、体力も目に見えて落ち、最初は座って動き回っていたのがぐったりとした様子へと変わっていきました。

 その姿を目の当たりにしたすあまさんは、「このままでは死んでしまう」と、すぐにそのスコティッシュ・フォールドをシェルターから引き出してもらい、自宅でその子の面倒をみることにしました。“ゆづ”と名付けられたその子は、そこから1年ほどすあまさんと共に暮らすことになりました。

貧血や風邪、皮膚や直腸、尿道に問題

すあま商會より

 高度医療センターへと連れて行くと、色々と体に問題があることが明らかになります。ゆづくんの体は、直腸と尿道がくっついてしまっていたのです。酷い貧血ということも分かり、まずは貧血を治すための生活が始まりました。シェルターから引き出した時の体重はわずか2.3kg、栄養が体に回っていないことも判明します。ストレスのせいか、ゆづくんは自分で自分の毛をかなりむしっていました。皮膚も弱く、ちょっとしたことで裂けてしまい、縫合しなきゃならなくなるといった悲惨な状態でした。

 垂れ流した排泄物で汚れた体を清潔に保とうと、すあまさんは1日5回くらいお尻を洗っていましたが、お尻を洗う度にゆづくんはとても嫌がり、その度に格闘を繰り広げる毎日が続きました。それにあわせて部屋の掃除も1日に5、6回必要になります。

 「噛まれたりなかなか大変でした。ゆづくんはすごく気が強い男の子でしたが、今思えばそれはすごく不快な状況が続いていたからだと思うんです。痛いことや辛いことがずっと続いていて、それでナーバスになっていたのかなと。私も最初の頃は全然触ることができなくて、もう死に物狂いでした。だけど一緒にいるうちに少しずつ慣れてきて、スリスリするようにもなってきて、元はこういう子なんだなと分かりました。」

 貧血が治ってきたら次は風邪を治す、下痢の原因を突き止める、皮膚とお尻の問題も並行して考える……何も分からない手探りの状態から目まぐるしく日々は過ぎていきました。

高額な医療費を捻出するために

すあま商會より

 のちに皮膚が裂けやすいのは「皮膚脆弱症候群」だということがわかりました。直腸と尿道がくっついてしまっているのは先天性なのか後天的なものなのかは分かりませんが、下痢が尿道の方に入ってしまうと命に係わる病気を引き起こしてしまう危険があります。いくつかの病院を経て、専門の医療施設でも初めてのケースだと言われましたが、ゆづくんには手術で直腸と尿道を別々にする手術が必要でした。しかしそれにはこれまでよりもさらに高額な医療費がかかることは明白です。どんどん医療費がかさむ中、すあまさんはゆづくんの医療費を捻出する方法を考えます。

 「インスタグラムにゆづくんのアカウントを作り、いろいろな方々にサポートしてもらえる方法を考えました。オリジナルのマグカップやトートバッグを作って販売したり、ご寄付を頂いたりしました。」

 その甲斐あって色々な病気と闘ったゆづくんは、色々な治療や手術を経て、少しずつ少しずつ元気を取り戻していきました。

「私の仕事部屋を隔離部屋にして保護猫たちの面倒を見てきましたが、ゆづくんはその隔離部屋でお世話した最後の猫です。ゆづくんとの日々を通して、自宅の猫たちにも保護猫たちにもより良い環境を用意してあげようと、すあま商會をオープンするに至りました。」

 ゆづくんは下痢も治り、ちゃんとしたうんちも出るようになりました。顔も綺麗になり、皮膚も丈夫になりました。当初は4、5歳だったゆづくんの体重は2.3kgから6kgほどになり、ゆづくんを大切にしてくれる理解ある里親さんも見つかりました。今、ゆづくんはとても幸せに暮らしています。

すあま商會

営業時間

11:00 ~19:00 (定休日:水・木)

臨時休業などの情報はお店のTwitterInstagramで要チェック。

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文=春錵かつら

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