多頭飼育崩壊で保護された猫、仙ちゃん すあま商會をとりまく猫たち

2023/02/13 20:00

すあま商會より

 板橋区・大山。東武東上線大山駅からほど近い場所にある保護猫シェルターを併設したカフェ『すあま商會』。すあま商會をとりまく猫たちの物語、第4回は仙ちゃんのお話です。

 仙ちゃんは多頭飼育崩壊で保護された男の子です。仙ちゃんは第3回で紹介したゆづくんと同じシェルターからやってきました。「多頭飼育崩壊」というのは、飼い主が適正に飼育できるペットの頭数を超えてしまった結果、どんどん数が増えてしまい飼育不可能となる状態のことです。異常繁殖を繰り返して増えてしまったペットは、体に深刻な病気や障がいを抱えていたり、不衛生な場所で食事にありつけないまま命を落とす子もいます。

 仙ちゃんが保護されたのは、ある古いアパートの四畳半の部屋。その狭い部屋で保護されたのは、仙ちゃんも入れて66匹もの猫たちでした。飼い主の男性は次々と猫を増やし、わずか1年半くらいで60匹以上になってしまったそうです。もともとペット不可の物件だったうえに、生活保護を受けていたので家賃も払えず、「このままもうアパートを燃やして猫と一緒に死ぬ」と言っていたので、説得を繰り返してなんとか保護に至りました。

仙ちゃんの目の上には日に日に大きくなる膨らみが……

すあま商會より

 保護された猫たちの多くは近親相姦のため、体の弱い子はもちろん、眼球がない子や巨眼症の子など障がいを抱えた子も多くいました。多くの猫たちをお世話する中で、ゴージャスな長毛の猫がすあまさん(現:すあま商會店長)の目に留まりました。その子が仙ちゃんでした。カーテンの後ろに隠れているシャイなその子は、長毛に紛れてはいたものの目の上がちょっとポッコリしているような気がしました。そしてその膨らみが日々なんとなく大きくなっていることに、すあまさんはいち早く気付いたのです。

 すあまさんは、これ以上その膨らみが大きくなると眼球や脳に影響が出てくる位置だからと、保護団体の代表に病院で診てもらうようにお願いしました。しかし連れて行ってもらうことはなかなか叶わず、放置されたひと月の間に、その膨らみはみるみる大きくなっていきました。見かねたすあまさんが「里親になりたい」と保護団体にお金を払ってその子を引き取り、すぐに大きな病院に連れていくと、心配した通りガンだということが判明しました。その間も膨らみはどんどん大きくなり、可愛かった顔は見る影もなくなっていきました。

 ガンのできた位置や猫の頭の小ささを考えると手術するには厳しいということで、まずは抗がん剤での治療が始まりました。とはいっても抗がん剤治療も簡単なものではありません。最初の注射で命を落としてしまう子だって少なからずいます。しかし仙ちゃんは意外と体がしっかりしていたので、何とか望みをかけました。そして1回目の抗がん剤。仙ちゃんは無事、乗り越えてくれたのです。

 抗がん剤治療は決められた期間抗がん剤を投与して、そのあと一定期間ストップして……というサイクルを数回繰り返します。「ああ、良かった。この子の体は抗がん剤を耐えることができてる!」と、すあまさんはホッとしました。

Instagramキャンペーン フォロー&いいねでプレゼントが当たる!