多頭飼育崩壊で保護された猫、仙ちゃん すあま商會をとりまく猫たち

2023/02/13 20:00

猫のゴロゴロは信頼の証

すあま商會より

 仙ちゃんは怒ったり噛んだりしない子でしたが、とにかく怯えて心を閉ざしていました。撫でられるのが嫌でもずっと我慢して撫でられているような優しい子でした。すあまさんはなんとか慣れてもらおうと、仙ちゃんを引き取ってからは毎晩同じ部屋で寝ていました。

 やがて仙ちゃんは暗闇に乗じて、すあまさんの布団の中に入って来るようになりました。そのうちにすあまさんの身体に乗り、ゴロゴロと言うようになりました。大きくなって熱を持ったたんこぶをすあまさんの顔にスリスリ押しつけるようになり、その度にすあまさんは仙ちゃんの温もりを、そして生命を感じました。

 しかし「その日」は突然でした。ある日、すあまさんが仕事から帰ると、仙ちゃんはもう冷たくなっていました。苦しかったのか、部屋の中には少し暴れた痕跡がありました。無事抗がん剤を乗り越えて、仙ちゃんの様子が安定していた中での出来事でした。仙ちゃんのたんこぶは、もう温かくはありませんでした。

 安心しちゃいけなかったのかもしれない、毎日同じ部屋にいることが仙ちゃんは嫌だったかもしれない、もっと一人の時間を作ってあげればよかったのかもしれない、命を繋ごうとしたことが正しかったのだろうか……すあまさんは思いを巡らせましたが、正解は今でも分かりません。

「猫のゴロゴロは安心したり気持ちいい時だけに発せられるものではないんです。ゴロゴロはコミュニケーション手段のひとつなので、不安なときや辛いときもゴロゴロ言います。猫のゴロゴロは簡単じゃないんです。私はあのとき幸せだったけれど、ひょっとしたら仙ちゃんは、苦しいよ、辛いよって訴えていたのかもしれません。それでも、ゴロゴロは信頼できる相手がいて初めて発せられる行為なので、仙ちゃんも私を信頼してくれていたとは思います。猫のゴロゴロを聞いて看取ることができた飼い主さんは、本当に飼い主冥利に尽きると思っていますが、私は仙ちゃんの最後のゴロゴロは聞けずにお別れしたので、それが今でも悔やまれます。」

すあま商會より

 すあまさんは声を上げて泣きました。仙ちゃんとの日々はわずか2カ月足らずでしたが、仙ちゃんはすあまさんにとって、決して忘れられない猫になりました。

「仙ちゃん、今日もどうかすあま商會の子たちを見守ってください。」

 すあまさんは今でも毎日、仙ちゃんにお水とお線香お供えして、お祈りします。

すあま商會

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文=春錵かつら

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